第4回 暮しの手帖、僕の手帖。

暮しの手帖

先ほど『暮しの手帖』最新号が拙宅に届きました。
家に毎号届く本は『暮しの手帖』含めて食関係が三冊、マーケティング関連本が一冊の計四冊です。加えて、毎号書店で買う音楽関係の本が一冊あります。
どれも毎号読むのがワクワクする本ばかりです。その中でも『暮しの手帖』は僕にとって別格です。

『暮しの手帖』を開くと表二面をフルに使って以下の文章が掲載されています。
「これはあなたの手帖です
いろいろのことが ここには書きつけてある
この中のどれか一つ二つは
すぐ今日あなたの暮しに役立ち
せめてどれかもう一つ二つは
すぐには役に立たないように見えても
やがて こころの底深く沈んで
いつか あなたの暮し方を変えてしまう
そんなふうな
これは あなたの暮しの手帖です」
随分昔になりますが、初めて『暮しの手帖』を買った時のことを未だに今日の事の様に思いだします。
この文章に出会った時に衝撃を受けました。『暮しの手帖』は雑誌では無く、“手帖”なんだと。
表紙を開くと、最も広告価値が高く出版社としては収益源の要ともいえる表二面にあるのは広告では無く短文の文章のみです。しかも毎号同じ文章が同じ頁に掲載されている。
そして頁を捲っても捲っても『暮しの手帖』では広告というものに出会うことがありません。『暮しの手帖』は購読料だけで成り立っている、まさに『暮しの手帖』は“雑誌”ではなく“手帖”、しかも“あなたの手帖”なのです。
向き合うのは広告主では無く、読者であるあなたです。だから一番メッセージが伝わる最適な頁に毎号同じ想いをメッセージしています。
その凛とする姿に本気で衝撃を覚えました。

出版業界の知人達に会うと、溜息まじりに「本が売れない」と呪文の様に唱えます。
「本が売れない」の裏側には、本を売る=セールスという前提がある様に感じます。
花森さんも松浦さんも、彼は本をセールスするのではなく本をマーケティングしています。
雑誌というマーケットの中に”手帖”というカテゴリーを創造し、そのポジショニングを強固にする活動を着実に行っています。
もちろん本そのものが面白いのですが、本そのものを超えた市場のあり方を僕らに教えてくれます。
僕は900円で『暮しの手帖』を読めることに幸せと感謝を感じます。
我が家のリビングには前編集長花森安治さんイラスト画のカレンダーが毎年掲げられます。
昨日もそうでしたが、天気の良い休日は中目黒にある「COW BOOKS」への心地よい散歩を楽しみ現編集長松浦弥太郎さんの空気を感じについつい通ってしまいます。

僕にとって『暮しの手帖』はプライベートでの僕の手帖であると同時に、ビジネスにおけるガイドラインを示してくれる手帖でもあります。
そして今日も届いた最新号を捲り、冒頭のメッセージから目を通し気持ち良い一日を過ごします。

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